錫杖岳 前衛フェース 1ルンゼ


2011年9月16日〜19日
坂地(記録)・万福



 台風が日本に接近してきて雨雲が西から近づいてくる予想だったので、計画書を2つ用意した。一つは17日は登れても次第に天気が崩れていくことを想定した計画(17日の朝に取り付きに着かなくてはいけないので錫杖を計画)、もう一つは17日には雨が降っても次第に天気が好転していく場合を想定した計画(18日に登ればいいので穂高を計画)である。
 次第に天気が崩れていくなら、17日晴れることに賭けて、錫杖の1ルンゼ。次第に天気が回復していくなら、17日は雨でも涸沢に入って、18日に北穂の東稜か前穂の北尾根から穂高に上がって、滝谷のドーム。


 万福さんの家に寄って万福さんを拾い、平湯温泉へ出発。近畿自動車道から新しくできた第2京阪道路に入り京滋バイパス経由で名神に入る。豊中、吹田経由より近いような気がする。出発してしばらく行くと雨が降り出して、そのうちザーザー本降りになり、飛騨清見まで降ったり止んだりをくりかえした。ここまでは南北の移動だが、ここから東へ向かうので雨は止んでくるはずと強がっていると、本当に雨が止んできた。このあたりは雨も降っていなかったようで道路も乾いている。平湯に着いて、錫杖に行くか穂高に行くか相談した結果、2人の予想では天気は悪くなっていくと思われたので、この日一日に賭けて錫杖に行くことに決定した。2時前に中尾到着。天気がどうなるかわからないので駐車場はガラガラ。車から装備を降ろして支度をし、ヘッドランプを点けて登り出す。錫杖沢出合い着3時半。3連休の初日というのに誰もいない。どうせ今日は雨かもしれないと、テントを立てて4時半までうだうだ話をしてシュラフに入った。7時半に起きて食事をとり、登りに行く準備をする。空は晴れてくるのか降りだすのか判断しにくい曇り方だった。岩はしっとりしているが、気温が上げれば乾くだろうと判断した。
 年を取ると足腰が弱って来るのか、回を重ねるごとに取り付きまでが遠くなる。木々の間から岩が見えてきてもなかなか着かない。ようやく1ルンゼの下にたどり着いて、ザックの中の道具を出し、さあ登ろうかと準備していると、いいタイミングで雨がサーっと降り出した。たいした雨ではなく、岩の温度も高かったのでしめった岩はすぐに乾いてきて、いいあんばいだったが、ロープを結ぼうとしたときザーッと降ってきた。濡れないようにロープやガチャ類を岩の脇に寄せ、ザックを上に載せた。しばらくすると雨は止んだが、この雨で岩はビショビショになり、なかなか乾かなかった。1ピッチ目から濡れた岩を登るのはこわくてイヤだったので、乾くまで長いこと待っていた。







 ようやく岩も乾いてきたので、登り始めた。1ピッチ目を短く切ったので2,3ピッチを50mのばし、3ピッチでV字岩壁の下につく。雲が湧いてきて蒲田川をおおい隠し僕らの方へあがってくる。





 ルートはここからトポと全然違ってくる。本ルートからはずれてルンゼ通しの派生ルートに入ってしまったようだ。違う場所なのに、こじつけてトポの通りに登ろうとするから、どんどん時間が過ぎていく。A1のピッチにあたるところは、うまい具合に(?)ちゃんと凹角の中がハングしている。うっかりアブミをザックから出さずに登ってしまったので、どうしようかと思ったが、どうしようもなにも、ハーケンの1本も打ってないので、たとえアブミを出していたって掛けようがない。カムを突っ込んでA0で越えた。しばらくしてスラブにトラバースした所から本ルートに戻ったようだ。ハーケンは要所要所(意味不明なハーケンも多かったが)に打ってあったので、こちらも登る人は多いようだ。
 V字岩壁の横を登っているあたりから雨が断続的に降ってきた。登り始める前は、濡れた岩が滑りそうで怖かったが、いまでは濡れていて当たり前のようになってきて、雨でビショビショになっていても気にならなくなってしまった。(これがクライミングハイかな?)
 横断バンドにでて、さらに上を伺う。歩いて降りるならもう1ピッチ伸ばすのだが、時間も遅いので懸垂下降で下りることにし、ここで終了することにした。終了支点にロープをセットし50mいっぱい降りた。二人でロープを引くがびくともしない。岩角にでもはさまったかと、登り返したが、どこにもはさまっているわけでもない。結局、懸垂支点まで50m登り返す羽目になった。懸垂支点の前に立ってロープを動かしてみたが全然すべらない。支点の前で滑らせてみても動かないようなら、50m下でいくら引っ張っても動かないはずだ。濡れたロープの摩擦の大きさを実感した。ゆっくりしていたら暗くなってくるので、以後リングの付いていない支点にはもったいないけれどカラビナを1枚ずつ残置して降りた。(日置さん、今行けばカラビナ4枚ゲットできますよ)
 取り付きに降りたら真っ暗で、テントに着いたのは7時半だった。もう二人ともヘトヘト。明日はもっと天気が悪くなるだろうから、ゆっくり酒を飲みながら、食事を作って食べた。そのうちに眠くなってきたので、ひとあし先にテントに入って寝てしまった。
 翌日起きると、快晴。予想とまったく逆の展開だ。こんなことなら穂高へ行ったらよかったとくやしがったが、後の祭り。しかし、クライマーはみんな雨を予想したようで、これだけの快晴にもかかわらず2パーティーしか登りに来なかった。登攀に出かけたパーティーを見送って、二人で「雨降れ!」と祈ってみた(もちろん冗談です)が、いっこうに曇ってくる気色もなく、二人ともずっしり重い濡れたロープや服を岩の上に広げて乾かしトカゲを決め込んでいた。10時すぎにようやく濡れたものも乾いてきたので温泉に入って美味しいものでも食べようと、下界に向けて出発することにした。





 中尾の露天風呂を上から見ると若い(山から下りると、みんな若くて美人に見えます)男女数人が水着を着て湯につかっているのが見えた。その横を見ると、おっさん二人が前を隠さず股を広げて入っているのが見えた。
 無料の露天風呂では石けんで体を洗えないので、車に荷物を積みこんで平湯へ行く途中にある新平湯温泉の「タルマのゆ」に行くことにした。客が少ないのを知っていたので、もうつぶれているかもしれないと思っていたが、まだやっていました。客は僕らを含めて数人。芋の子を洗う平湯と設備は変わらないのに広い湯船を独占できるので、平湯よりずっとゆっくりできる穴場です。万福さんは誰もいない湯船で泳いでいた。料金表には800円と書いてあったので「高い!」と思ったが、600円しか取られなかった。
 万福さんが、帰りに時間があったら寄ったらいいと日置さんの実家の地図を日置さんからもらっていたので時間もあるし寄ってみることにする。何度電話を掛けても出ないので、行っても居なかったら高速代がもったいないと地道を走って日置宅に行った。大工仕事をしていた日置さんに会えて、一晩泊めてもらい、夜は小宴会。
 日置さん、仕事の手を止めて申し訳ありませんでした。ありがとうございました。
(坂地)